企業所属の研究者に求められる能力(その1)
企業に所属する研究者に求められる能力について、研究そのものを遂行する能力が必須であることは言うまでもありません。
研究全体のグランドデザインを描き、必要な情報とツールを収集して正確に実験を行いデータを取得します。
さらに、得られたデータを解釈して考察し、新たな知見として何が明らかになったのかを明確な形にまとめます。
一般的に研究とはこのような流れで進められていくものなので、これらを滞りなく遂行できることは、研究者として最低限必要な能力であると世間一般に認識されていることと思います。
ここでは、このような能力は一定レベルで担保されているものとして話を進めます。
製薬会社における新薬の探索研究は、きわめて多岐にわたる専門性を持った研究者が、チームとなって協力しながら進める必要があることに特徴があります。
有機合成化学、分子生物学、薬理学、薬物動態学、毒性学、物性分析学、製剤学など、学問の領域としては全く異なる分野の研究者が、同時に同じ方向を向いて、たった一つの医薬開発候補化合物(ヒト臨床試験に進められる化合物)を作り出す作業が、製薬企業における探索研究、と呼ばれるものです。
プロジェクトを進めていくうえで、薬効の強さが足りない、触ってほしくない他のターゲット分子に作用してしまう、消化管吸収が悪い、化合物の安定性が足りない、などの問題が次々と降りかかってきます。
これらの問題を自分とは全く異なる専門性を持った研究者と、力を合わせて乗り越えていかなくてはなりません。このような状況で必要な能力とは何でしょうか?
そう、相手の状況や立場を理解し必要な対応を取りながら、自分の仕事を進めるための要求もチームの中で通していく、そういう高度なコミュニケーション力が求められます。
アカデミアでも最近はこのような研究の進め方が増えてきたとは様々な場面で感じますが、やはり企業で求められる協業のレベルとはかなり違うものと思います。
採用面接で、そのような能力の高さをアピールできるようなネタがあると、面接官の印象も上がるのでは?と思ったりします。
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