研究者としての専門性の軸
世の中の流れもあって、アカデミアにおける研究も、様々な専門分野にまたがって進められることが顕著に増えてきたと感じます。
以前は、共同研究でそれぞれの専門性を持った研究者同士がタッグを組んで進められることがほとんどでしたが、今は研究者個人であれもこれもやる、というパターンの増加が顕著だと感じます。
複数の専門分野について高いレベルの知識や技術を持っていることは、大きな強みになります。
イノベーションは、複数のアイディアや技術を組み合わせて生み出されることがほとんどですから、異なる分野で一定レベルの専門知識があることは、イノベーションを生み出す原動力となります。
採用面接の研究概要説明を聞いていても、この潮流の変化はすごく速くて大きいと感じます。
有機合成でツール化合物を合成しながらバイオ系の評価に用いる、バイオインフォマティクスの技術を用いてリアルワールドデータを解析し、その結果をもとにターゲット分子探索のためのIn vitro実験を行う、などの事例が今年の面接でもありました。
このように、異分野を組み合わせた研究というのは、それ自体はとても価値のある取り組みではあるのですが、研究者の育成という観点からはやや問題があります。
特に、博士卒の方に企業が求めるのは専門性の高さであって、幅ではないことに留意する必要があります。
企業所属の研究者に求められる能力(その1)
上の記事でも述べたように、企業の研究ではそれぞれの分野で専門性を極めた人たちが集まって、プロジェクト制で仕事を進めるケースがほとんどです。
個人であれもこれもできます、というのはあまりアピールポイントにはならないとご理解ください。
例えば、Medicinal ChemistとしてもMolecular Biologistとしても活躍できます、という人がいたとして、どっちのレベルもそこそこだったら企業は採用しようとは思わない、という事です。
当たり前のことですが、研究開発をビジネスの観点からとらえた場合、メガファーマも中小メーカーも全く同じ土俵で戦う必要があるという事を忘れてはなりません。
それを可能にするためには、少なくとも研究のレベルは世界でトップレベルにあることを維持する必要があります。
様々な分野を手掛けて研究に取り組んでいる方は、そのような背景を踏まえて、どのように自分を売り込むのか、戦略を練って面接に臨んでほしいと思います。